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カムストック第六十七談「1989〜風家の三姉妹〜イントロダクション」

「1989〜風家の三姉妹〜」が近づいてまいりました。

作品のイントロダクションを、
淡々と書いていきたいと思います。

今回、カムカム作品としては非常に極端と言いますか、
いつものカムカム作品の一面を肥大化させ、
いわゆる演劇的な部分を、
演出にも劇作にも過剰に盛り込んでおります。
超演劇的です。

サラウンドミニキーナなんて銘打っておりますが、
まず普通の舞台客席が向かい合う構造はやめて、
立体的な舞台構造にという縛りをあえて前提につけました。

これは「叔母との旅」での演出がきっかけです。
ご覧になった方はおわかりかと思いますが、
あれこそ超演劇的な舞台。台本。
演出に苦悩しながら、
最近は、少し脇に置きつつあった、
本来自分の中にある、
演劇的表現なるものへの渇望、偏愛。
そういうものにあらためて目覚めてしまった。
元来カムカムは奇妙な演劇的表現を自分達なりに模索、開拓してきた劇団でした。
しかし、劇場が大きくなるにつれ、
保守的と言わないまでも、
やはり、いつものカムカムというものを見たいと言うお客さんの思いを無視することもできない。
実験的な要素は、即、観客減、劇団継続困難状況みたいなことに直結しかねないので、
いろんな踏みだしは交えつつも慎重に。
少し大胆さがなくなってきていたかもしれません。

そこで、毎年やっていた、
明石スタジオでの小さな公演を
特化させて思いっきり演劇的、実験的にやろうというのが、
サラウンドミニキーナです。

思いっきりやってます。
気持ちいいくらいに。
そう見えてほしいと願っています。


さて、この作品は、
1989年という僕が奈良から東京へ出て来た年の話です。

どうしてその年のことを芝居にしようかと思ったか。
いろんな理由がありますが、
「1989」という、冷戦崩壊を扱ったドキュメント本を読んだことがきっかけです。

冷戦崩壊の一連の出来事の中で、
「汎ヨーロッパピクニック」
という事件があります。

ベルリンの壁崩壊の三か月前の夏休みの出来事です。

知りませんでした。っていうか忘れてました。
まああの頃は新聞もちゃんと読んでなかったかもしれない。
いろんなニュースがありすぎて埋もれていたのかもしれない。

このピクニックが大変演劇的で、
ものすごく想像力をかきたてられたんです。

ちなみに今回の芝居には結局出てきませんが、
チェコの革命を先導したハベルは劇作家です。
彼が中心となって起こすビロード革命の経過も、
とても演劇的です。

まあそれを読んで、
その年、上京したてで早稲田に入り、
今一生の仕事となった演劇を始めるにいたった自分史が勝手にリンクして。

東欧の人々がピクニックから大脱走を企てた夏、
僕や八嶋、吉田は、
演出担当の先輩が姿を消した新人公演を
新人の自分達の自力でやることを決意して
日々、演劇小屋と呼ばれるたまり場を
三十人は入れる劇場にすべく
セメントを練ったりしていたのです。

上京した頃の強烈な思い出は、大喪の礼です。
その時僕は歌舞伎町の新宿プリンスホテルに受験のために滞在していました。

考えても見てください。
十八歳の少年が東京に出ていくだけでも大変な経験なのに、
そこは大喪の礼という、
滅多にない非常事態に覆われていた。

あの日の冷雨は一生忘れられません。

というわけで、

「1989〜風家の三姉妹〜」は、
限りなく松村武に近い、
佐藤恭子演じる松川武太郎が、
自分の過去を振り返りながら
「1989」という芝居を書くというところから始まります。


さて、風家とは何か。

これはもちろんフィクションですが、
これには最近僕がはまりにはまっている古事記が関連します。

この話を詳しくしだすと長くなるのでまた別の機会に譲りますが、
僕は奈良出身なのに
古事記に関しては、
より出雲に関心があります。

諸説あり、確定してない歴史ですが、
結論から言うと
僕は大和の国の前に
日本全土に広がる出雲の国があったと考えています。
出雲の国があったというか、
出雲を都とする日本国があったと思っています。
そしてそれは何らかの原因で滅んだんだと。

そしてさらに、
その出雲の国は、
いろんな面で、
相当な進んだ文明であったと。
科学のことではないです。
考え方のことです。

出雲日本は、
戦争ということをせずに国を支配する考え方を実現していたと思うんです。
その根幹には死者の霊を信仰する
今の神道とは異なる日本最古の宗教があります。

その国を作ったのが渡来人であろうスサノオ。
その国の最盛期がその何代目かにあたるオオクニヌシ。

ここら辺は
「スサノオ・大国主の日国」梓書院
と言う本を読んで影響されております。



さて、
さてばっかりですが、

実はこの「1989」の予告編を
3月20日のプレイパークと言う
鹿殺しのチョビがやろうとした
短編フェスティバルで上演予定でした。

3月11日
その稽古中に震災にあいました。

フェスティバルは中止になりました。


今回の芝居の冒頭シーンに
その時の予告編をそのままやります。
構造的には妙ですが、
それもあり。
ぜひそのままやろうと思いました。


「1989」という時代の変わり目を描こうとした思考が、
震災という、これまた時代の変わり目を通して
また様々に変化していき、
物語も様々に変化していきました。

前回のカムストックにもありますが、
一瞬にして無に帰する文明というものの脆さを目の当たりにし、
そこになぜか消えてしまった出雲日本が重なりました。

週刊誌の見出しに、
あろうことか被災地の風景を
「黄泉の国」
と評した言葉があり、
あまりに酷いと思いつつも、
いろいろと考えてしまった。

そして自ずと
「再生」という言葉が重くのしかかってきた。

風家というのは巫女の家系で、
もとは大和以前の国に仕えたシャーマン。
予言者であり、語り部であり、俳優でもある、
古代の演劇人です。
くれぐれもここはフィクションです。

その風家の人脈が今も残っていて、
自ずから演劇的な人生を送ってしまう。
中には演劇そのものに携わるものもいる。

そして風家の直系の娘、風みどりには、
風を読み、未来に何が起こるのかを感ずることができる。

そういう設定で始まったこの話、

そうなると風みどりは
3月11日のことも、
その後の今の日本のことも
すでに何年か前に見えてしまっているのではないか。

そうはっきりとではないけれど、
何かの崩壊が起こるということを察して、
それを何とかしようと旅に出る。

そんなイメージで風みどり=風見鶏が一方の主役として出てきます。

僕は彼女を安住の国に辿りつかせようと、
それだけで言葉を紡いでいました。

風力発電の風車が回るひまわりの平原。
(ひまわりは放射能物質を花に取り込んで、大地を浄化する作用があるそうです)


そこに物語を辿りつかせようと言葉をこねくりまわしました。

だから本当に、いつも以上に、こねくりこねくりしている芝居です。
決して難解ではないと思いますが、
時間軸も激しくいったりきたりして
とにかくめまぐるしい。

でも
え〜むずかしそうと思わずに見てほしい。

こういう舞台を作ることで、

僕らも僕らなりに

何とかしようとしているのです。

その気迫と決意を見てほしい。



最後に前回と続きますが、

奈良新聞連載「赤い扉の向こう側」の原稿を



「赤い扉の向こう側」

第五十一回「大地のめぐみ」

信じられない事に、この連載も五十回を越えてしまいました。書き手としてありがたいことです。これぞ駄文を懲りずに読んで下さる皆様からの大いなる「めぐみ」。ということで、ここからのシリーズは「〜のめぐみ」でお送りしたいと思います。

先月の地震で、震源地付近の海底の大地は24mずれて3m隆起したらしいです。長淵剛さんは自然への激しい怒りと、それでも立ちあがる人間の魂を力強い詩にしていましたが、今ほど「大地のめぐみ」なんて甘い言葉がそぐわない時もありません。私達は大地の恐るべき力と、その振る舞いの非情、徹底的な理不尽をまざまざと見せつけられました。

それでも今日(この原稿を書いてる日)、東京ではソメイヨシノが満開の時を迎え、うららかな春の陽射しの中、多くの人々がこの無力感に覆われた暗欝の日々から、少しでも明日へと繋がる希望を求めて、ごく控えめに、それぞれの思いを胸に、近所の桜を見上げたことでしょう。毎年春には必ず桜が散って、また次の春には必ず再び桜が咲く。そのことが「大地のめぐみ」でなくて何でしょう。

  その正体は再生の力です。この大地より生じたものはすべて、この再生の力を「めぐみ」として授かっている。生まれ出るや、そこからは大いなる自然の営みの前に、傷つき、衰え、やがて滅びゆく理不尽が、か弱い生命の必然です。しかし、それでも再生する根強い力もまた、我々の体に備わったもう一つの必然なのではないでしょうか。「めぐみ」として。

  この「めぐまれた」力を使いこなし、しぶとく再生を果たすことで、我々は母なる大地に応え、この世に「めぐみ」というものの実在を証明することでようやく、その非情、冷酷に向かい合う精神を持てるのではないでしょうか。
 この文章が皆様に届く頃には東北地方にも桜が咲いていることでしょう。


奈良新聞 4月15日号

at 11:43, 松村武, -

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